近年、多くの日本企業が台湾市場への進出や、台湾企業との連携を検討するようになりました。その中で見えてくるのが、「スピード感」「柔軟な対応」「人情味」といった台湾独自のビジネス文化です。日本とは異なる現場の空気感を理解することが、台灣ビジネスを成功させる鍵となります。
1. 圧倒的なスピード感
台湾のビジネス現場では、「スピード=誠意・信頼」と捉えられる傾向があります。
たとえば、メールよりもLINEやWeChatなどの即時性あるチャットアプリが主流であり、初回商談でいきなり「LINEを交換しませんか?」と聞かれることも珍しくありません。これはカジュアルな印象を与えつつも、「迅速に意思疎通ができる相手かどうか」を見ている証拠でもあります。
また、意思決定のスピードも速く、現場担当者がある程度の裁量をもって即答することが多々あります。
「今日見積依頼→明日回答」「サンプルを数日で用意」など、段取り重視の日本的なペースに比べると、驚くほどのスピード感で物事が動きます。
2. 変化に強い柔軟性
台湾では、変化や状況の変動に柔軟に対応する姿勢が重視されます。
納期、価格、仕様、パッケージデザインなど、状況に応じて柔軟に再調整されることも珍しくありません。
こうした調整は、「最初と違う」というネガティブなものではなく、「今の条件でよりよい結果を目指す」前向きな動きと捉えるべきです。
日本のように「一度決めたことを最後まで貫く」スタイルとは異なり、台湾では「その都度ベストな選択をする」ことが評価されます。
そのため、最初から100%固めるのではなく、ある程度のゆとりや“相談の余地”を残しておくと、結果的にスムーズな関係構築につながります。
3. 人情味あふれる文化と、外国企業への温かい対応力
台湾は、ビジネスシーンにおいても人と人との温かいつながりを感じられる、非常に人情味にあふれた土地です。
多くの台湾企業は海外からのパートナーに対して大きな関心と親しみをもって接しており、特に日本企業に対しては高い評価と尊敬の念を持っています。こうした姿勢は単なるビジネスマナーではなく、「ようこそ台湾へ」という歓迎の気持ちが自然とにじみ出ているものです。
たとえば、言語の壁がある場合でも、英語や翻訳ツールを使って丁寧に対応してくれたり、日本語のできるスタッフを招いて積極的に意思疎通を図ったりするなど、「相手に寄り添いたい」という姿勢が随所に感じられます。
初対面の商談でも、タピオカドリンクを飲みに行く、現地のローカルフードを一緒に楽しむといった“おもてなし”の場面も多く、顧客を一時的な取引相手ではなく、信頼できる「友人」として迎え入れるのが台湾流です。
こうした背景から、台湾は今も昔も、海外ブランドがアジア市場へ進出する際の「最初の一歩」として非常に魅力的な存在です。
地理的優位性に加え、成熟した流通インフラ、消費者の受容性の高さ、そして東洋と西洋の要素が融合した独自の文化環境を持ち合わせており、台湾市場は「アジア市場の前哨基地」とも言われています。多くのブランドがまず台湾でテストマーケティングを行い、そこで得た知見を活かして中華圏や東南アジアへと展開しています。
特に日本企業にとって、台湾は言語的・文化的な親和性が高く、長年にわたり築かれてきた信頼関係、そして消費者の「日本ブランド」への安心感が後押しとなり、海外展開を成功させやすい土壌が整っています。
台湾との協業は、単なる販路拡大にとどまらず、海外市場での信頼と実績を築くための重要な起点となるのです。